2017年1月26日

カメハウスの夜

家族の事件で二年空けてしまって、ようやくスキーに来る事が出来た。
腐ってしまったかと心配だった、我が別荘!カメハウスは取りあえず無事であった。
少ないと思われていた雪、年明けからの寒波でご覧の通り半分埋もれている。雪荷重がたたって少々ナナメってるし、外壁も痛んでいるが可愛いもんだ。長年って思い返せばすでに25年目かな、家族で作って修理してと手をかけて来たのでこいつも我が家の一員だ。

2CVを50m手前で止めて、スコップを持ち出してラッセルする。小屋に到達し、入り口を開けるのに30分。まあ普通、大した事は無い(大汗)。
何故か鍵がなくなっている?。
隣人が使ったのかな?。内部に問題は起っていない。
だいたいこの村に鍵はいらないし。
ぶつぶつ言いながらコードを持ち出して隣家のコンセントにつなぐ。電気は引いてないので25年隣の世話になっている。
裸電球がホワっ~とオレンジ色に灯る。
空き家にも灯が灯ると生を吹き返したかの様である。
まずは3年ぶりの掃除から。掃除機を引っ張り出して徹底的に!。
この地域では小屋の名前にもなるカメムシが多い。大発生の年には掃除機が2回満タンになる!。今年は100匹程度かな、普通だな。
ふと天井を見上げると奇怪な塊!が目に飛び込む。
メロン大の蜂の巣だ!。ぞ~っとして凝視するも蜂の気配が無い。あはは、こいつも空き家なのだ。それでも少々怖いので巣はそのままにいじらないことにした。何でもイナカでは蜂の巣は縁起ものと言うし、家族を連れて来た時に見せたいし。でも来なかった2年、もし来ていたら確実にやられていたのだろうな。家族の不運も僕の幸運だったのかしら...妙な気分。
さて、荷物の運び込み。
旧いフィッシャーに旧いラング、私物のバッグ、食料のアイスボックス、石油タンク、そしてご近所さんへのお年賀の品。
雪まみれになって息が弾む。
往復の度に通路が踏み固められ転ばなくなってくる。

次に暖房機のチェック。
給油を済ませボタンを押して点火...着かない!。
絶叫した。
夜はマイナス15度は行くこの場所では死活問題だ。
あれこれいじくり回して、結局、外部に突き出た吸排気筒が、屋根の落雪で折れ曲がっていた。
仕方が無いか。
予備の電気毛布を確認し、このまま逗留することにする。
村の友人に助けを求める最後の手段も残されているが、こんなとこで暮らす奇行を笑われてる関係でおいそれと弱みは見せられない。この程度、鼻で笑ってこなさなければコケンに係わるのだ。
事実、翌日それを知った友人の目つきには確かに尊敬の色が混じっているのを見たし。

次は給水システムの復旧。
と言ったってポリタンクに水を汲みに行き、流し台の上に上げて蛇口を捻る...折れた!。
いやー参ったな。これもすぐには直せない症状だ。
まぁ一人だし、炊事しなければ問題は無い。
一応の引越が済み、何はともあれ湯を沸かしてコーヒーを飲む。
さぶ~。
寒さに急かされて峠の向こうにあるいつもの温泉に行く。

何だか都会の垢が落ちた気分になる。
ひとときの温もり。幸せだ〜。
帰路は暗くなって気温が下がり凍結が始まっている。怖々と、そしてジモトの車をぶっちぎる。2CVではこんなシーンでないと気晴らしは出来ない。

独りだとココではマトモな物は食べない。
先ほど町のマーケットで出来合いを買い込んできた。オカラの和え物、ホウレンソウのおひたし、もやし、焼き肉、が今夜のメシ。
ジモトの酒「会津」一升。これさえ在ればいいのだ。
電気毛布を膝掛にしニット帽をかぶり目一杯着込み、KeithのItalia SoloをBGMに、カセットコンロにフライパンを広げチリチリ肉を焼き、酒を煽り、本を読む。
トロリと本に溶け込む。

静かなことに気付きふと外を見る。
リフトが止まっていて、アナウンス音も静まり、食堂の灯も落ち、スキー客の車もなくなっていた。
音が無い。
空は期待通りに星が降るようだ。
明日は晴だな。
火のつかない暖房機でもデジタル表示に氷点下の室温だけが煌々と疎ましい。
さぶ~。