2016年8月30日

女神を追い越せ

スタンダードディスタンス3種目合計51.5キロ。オリンピックディスタンスと心地良い言い方もする。
これは僕の肉体の限界を示す。そうは言っても、いつの間にかこの距離は3戦目となった。前2戦は完走出来ている。僅かに余裕ができたのか、単なる慣れか判らないが自分の痛み方を計れコントロール出来る様になって来た。

スイムは1.5キロ。
波はまったく無くて泳ぎに心配は無い、次の種目を考えて疲労の程度を調整する様に目標30分に設定。実29分と予定通り。疲れもそこそこにトランジッションまで小走りに。
バイクは40キロ。
オリンピックTVで見る種目変え時の数秒の早業とは雲泥の差。ウェットスーツを皮膚から引き剥がす様に脱いで、地面に座ってバイクシューズを履いて、ヘルメットを付けてサングラスをかけ、補給のジェルを飲む。この身支度を休息とも言える1分はかけてスタート。
乗車して、あれっ、ハンドルがふらつくのを感じ風が強いのにハッとする。
ここは広い飛行場。遮る物が無くって風が一直線に体当たりしてくる。最初の直線が向かい風。ギアを下げて目一杯踏ん張る。20キロがやっと。そうしてコーナーから滑走路へ出る。一気に追い風に転換。スピードが乗る!。2段飛ばしでギアをカンカン上げ45キロへ。
超~気持ちがいい。1.5キロの滑走路は快感だ。
良い事はすぐ終焉を迎えるのが人生、ヘアピンで逆方向に。ギアをロー一杯に下げ、身体を低く構え、踏ん張る踏ん張る。それでも20キロを保てない。元々踏み込む力が無く、回転数で走るタイプ。追い風では他者を気持ちよく追い越せるが、向かい風ではその罪とばかりにガンガン抜かれてしまう。
もがく~。
3周目から身体が悲鳴を上げ出した。股関節がヤバい。次の周には腰も痛み出す。
これで無理したら走れなくなるかもしれないと判断して向かい風では2割ぐらい力をセーブしてみる。痛みが許容範囲に落ち着く。
さて、サイクルメーターがおかしい。いつもかなりショート表示だが、いつも以上にショートだ。周回の確認に不安になる。判断出来ないので暗算よりさらにもう1周する。前回の20分落ち。いまでも判らないけど1周多く走ったのかしら?。まあ失格よりマシ。
降車後よろけながらトランジッションへ歩いて行く。
バイクをラックにかけ、ユックリ休息を取る様にランシューズを履く。腰を大きくストレッチし、気持ちを切り替えてスタートする。
ランは10キロ。
腰痛、股関節痛を抱えてまともに走れない。3種ともそうだが、次の種目の筋肉が正常に機能しだすのには少々時間がかかる。ランでは今まで1キロかかったが、今回は股関節が酷く疲労し中々ラン状態に身体がフィット出来ない。5キロ過ぎてようやく機能し始める。それでも51.5キロはヤバい。毎回この辺りから気持ちが折れそうになるのだ。
歩いてる人を見ると僕もちょっとでいいから歩こうかな...ぜったい歩かないのが目標だ、と気持ちが揺れ始めて来る。限界、どうにもならない壁を触れながら走る。

神の仕業か、女神降臨す。
スレンダーで長髪をなびかせながら突然僕を追い越して登場し15m先を行く。なぜかそれからはスピードが全く同じで距離は2周しても変わらない。ちょっと華奢げな内股の長い脚♡。ロックオンしてついて行く。一人じゃないって感じ。凹んだ気分が持ち直す。
ストーカーヨロシク淡々と周回をこなし、ようやくのゴールが見えて来た。女神はまだ周回が残っていたのか、分岐点でサッと消えて行ってしまった。そう、僕は救われたのだ。そして3戦完走という自信まで手にする事になった。

後ろ姿だけ...心残りだ~。追い越すスピードが必要だ!。

2016年8月10日

目から鱗

恒例の軽井沢で夏休み。
浅間山に登った。
毎年来ていて友人を誘うのだが誰も付き合ってくれず、今年ついに念願が叶った。でも噴火警報レベル2。火口から2キロは入れない(涙)。それでも行こうと娘グループに誘われて敢行する。
浅間山荘からスタート。第二外輪山を越えて山頂を望む樹木が低く少ない場所に入る。すると雲がかかって雨粒が落ちて来た。そして雷が多いとは聞いて来たが、まさか頭の上を雷鳴がグルグル回っている感じ。怖くてこれ以上は進めない。逃げる様に下山した。
たいした山じゃない的に言われるが、どうして地形の変化も楽しいし、日帰り登山にはちょうど良い行程だ。
来年の登頂を誓う。

翌日は、中軽井沢駅前で代々続く有名な蕎麦屋へ蕎麦喰いの友人を連れて行く。ご覧の通り、凄いもりそばが出て来た。長さは10センチ程に切れていて、幅は3ミリ〜10ミリとバラバラ。これが売り物かと目を疑う。20年前に来た事があるが、もう少しは揃っていた記憶。そしてたいして美味く無いと思ってきたが、悪化してるかしら。
30人は入ろうかという店内で昼時は行列も出来、長テーブルに詰め込まれる。前回同様がちゃがちゃしい程のにぎやかさ。酒は一人1本までしか頼めない。さっさと喰って出てくれ的な空気だ。それなのに生粉打ち(と思う)で出す気合い。かなり高齢の主人と職人さんが麺打場でほぼ休み無く格闘している。
すげ~。
完成度の高い東京の名店とは対極だ。細かい事言わずにいいから喰ってみろと言わんばかり。
で...美味しかったのだ。
いいんじゃない。田舎で、田舎の感性で昔からやってきた通りにゴツい蕎麦を出す。カタチ何ぞ気にかけずウソの無い仕事をする。こういうのアリだなと感心した。

僕の蕎麦も改めて見直そうかしらと、衝撃を受ける。