2017年11月8日

夜明けのコーヒー

此処ん処、当地の事務所に協力を求められて、定期的にカメハウスを利用出来る幸運に恵まれている。
ここ5年、此処に来るは単身である。
家族からはカメハウスの話題はすっかり無視されている。絶対的に不便なので誘われるのを極度に恐れているのである。関連の話が出ていると僕のそばには近づかない様にして居るのだ、と思っている。
一人はイイもんだ!。
負け惜しみではないぞ。何をするにも自分の判断だけでいい。
朝、歳のせいなのであろうが、飲んでいても6時には目が覚めてしまう。此処に来て寝たいだけ寝ていられるとは言っても染み付いた貧乏性は抜けないのだ。追い打ちをかける様にリセットし忘れた有能なiphoneが容赦ない。せめて10時までは寝たいなぁ。
身を起こして暫し呆然する。
この間10分...自分でも長いなぁと気付いてヤメる。
おはようと、言う相手も無いし忘れてしまっていい。顔を洗うのだって忘れてしまえるし、歯磨きもつい...。ひげ剃りなんて必要も無い。どだい洗面所も無いし、水は汲みに行くのが面倒なので節約が基本なのだと言い訳ける。起きて兎に角コーヒーを湧かす。一人分で事足りる。味なんて気にするのさえ忘れる。昨晩の飲み過ぎがたたるのであるが、喰いたく無ければメシも忘れてしまえる。忘れてしまえるのなら作る面倒からも解放される。
妻に言わせると潔癖性で神経質な僕なはずなのだけど、コレを自由と言うのである、な。

カーテンを引く。スコーンと抜けたブルーが目に飛び込む。秋晴れの雲一つないイイ天気だ。「サイコー」と独り言。
寝床に埋もれていても仕方ないので、ざっくりと着替えて(全部ではない)散歩に出る。寝間着では寒いのでストライプの入ったジャージを重ね、ニット帽を深めに被る。どう見てもこの村の朝に出くわす地元の年寄り風情だね。つまり、とても此処に相応しい佇まいとでも言ってしまおうか、人っ子一人居る筈の無い秋のスキー場だけど誰も怪しいとは思わないだろうな、と口の中でブツブツ。
声を出す手間も省く。
そして村人一人ぶらりと歩き出す。

紅葉は先週だったかな。
山は、赤や黄色の艶やかな色合いは褪せ葉の落ちた樹も目立ち、錦とは言えず茶色だ。先週だったらなあ。この辺りは針葉樹の植林が少なく広葉樹の見応えある錦絵がとにかくお気に入り。それが見たくて用事の調整を試みるのだけど、30年通っていて絶好機に来れたのはわずか3回でしかない。僕にとって超の付く貴重品なのだ。今年も外したな。
草原のゲレンデを登る。リフト1機分の行程をゆっくりと景色を堪能する。
突然日の光が煌めき眩しさに手を翳す...山々に囲まれているので日の出はこんな時間になる。ぼやけていた茶色の樹々が途端に生気づく。引き際を逸した月が随分薄くなって来ているが、消えるのを惜しむ様に青空に浮かんでる。
気に入ってつい写真を撮る。高校では写真部だったけどその頃から上手く無かったな、と苦笑しながらだ..........そうして期待していなかったのだが帰宅して老眼鏡でやっとマトモに確認したら、見たのより月が随分小さい、それでも案外お気に入りが撮れた。

ほっとするなぁ。
身体の何処かからその「ホッ」が聞こえた気分がする。
我が家は一般的な家庭に比べかなりにぎやかなんであるが、その反動...後遺症にちがいない。
僅かではあるが...寂しい。

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